JLPTだけじゃない?日本語能力を証明するもう一つの選択肢BJTを知っていますか
- 川西ケンジ

- 3 時間前
- 読了時間: 9分

日本語の能力を証明する試験と聞いて、多くの人がまず思い浮かべるのが「日本語能力試験(JLPT)」ではないでしょうか。
JLPTは、日本語を母語としない人の日本語能力を測定・認定する、非常に広く知られた試験です。日本で生活する外国人にとって、就職や進学、在留資格に関する手続きなど、さまざまな場面で日本語能力を証明する手段として利用されています。実際に、出入国在留管理庁でも、在留資格に関する一部の手続きや基準において、JLPTの結果が日本語能力の証明として利用されています。
一方で、最近は日本語能力を証明する必要がある人にとって、JLPTを受験すること自体が一つのハードルになっています。
JLPTは日本国内では年2回、原則として7月と12月に実施されています。そのため、「就職活動のために早く証明書が必要」「在留関係の手続きで日本語能力を証明したい」「今の自分の日本語能力を早く証明したい」と思っても、次の試験まで数か月待たなければならない場合があります。さらに、受験希望者が多い時期には、申し込み開始後すぐに定員に達してしまい、受験そのものが難しくなることもあります。2026年のJLPTも7月5日と12月6日に実施される予定となっています。
そこで今回紹介したいのが、「BJTビジネス日本語能力テスト」です。
そもそもJLPTとは?
JLPTには、N5からN1までの5つのレベルがあります。N5が最もやさしく、N1が最も難しいレベルです。
N5・N4は、主に授業などで学ぶ基本的な日本語をどの程度理解できるかを測るレベルです。N3はN4・N5とN2・N1の間をつなぐ「橋渡し」のレベル。そしてN2・N1になると、日常生活だけでなく、より幅広い場面で使われる日本語を理解する能力が求められます。
簡単にイメージすると、N5では、ひらがな・カタカナや基本的な漢字を使った簡単な文章、日常生活でよく使われる短い会話などを理解する力が中心になります。
N4になると、身近な日常生活の文章や、比較的ゆっくり話される会話を理解できることが求められます。
N3では、日常生活で使われる日本語をある程度理解し、新聞の見出しなどから概要をつかんだり、少し難しい文章でも、言い換えなどの助けがあれば主要な内容を理解したりする力が求められます。
N2では、日常生活のさまざまな場面に加えて、新聞や雑誌の記事、一般的な話題の文章などを理解し、自然に近い速度で話される会話やニュースの内容をある程度理解する力が求められます。
そしてN1になると、さらに幅広い場面で使われる日本語を理解する能力が必要になります。新聞の論説や評論など、論理的・抽象的な文章を理解し、ニュースや講義などを自然な速度で聞いて、内容だけでなく、登場人物同士の関係や話の論理構造、話し手の意図なども含めて理解する力が求められます。
私自身、N1を取得していますが、個人的な感覚としては、N1になるとテレビのニュースを聞いたとき、「何となく日本語が分かる」という段階ではなく、ニュースの内容そのものを追いかけられることが一つの目安になると感じます。もちろん、ニュースの専門分野や内容によって難しさは変わりますが、N1では日常会話だけでは身につきにくい、幅広い語彙や表現、文章構造への理解が求められます。
なお、JLPTは「読む」「聞く」に加え、文字・語彙・文法などの言語知識を測定します。一方、「話す」「書く」といった能力そのものはJLPTの試験項目には含まれていません。
JLPTを受ける前に「問題を解いてみる」のもおすすめ
「自分はN3くらいだと思う」「そろそろN2を受けてみよう」と考えている人もいると思います。
しかし、実際に受験してみたら、思っていたより難しかったということもあります。
JLPTの公式サイトでは、各レベルのサンプル問題が公開されています。受験料を払って申し込む前に、まず一度、実際の問題を解いてみることをおすすめします。
特に、「自分がどのレベルの問題まで理解できるのか」を確認するためには、複数のレベルの問題を試してみるのもよいでしょう。サンプル問題である程度の感触をつかんでから受験するレベルを決めれば、実力に合わない級に申し込んでしまうことを避けることができます。
JLPT公式サンプル問題・過去問題等
もう一つの選択肢「BJT」とは?
BJTは、「Business Japanese Proficiency Test」の略で、日本語では「BJTビジネス日本語能力テスト」といいます。
名前の通り、一般的な日本語能力だけではなく、仕事やビジネスの場面で日本語を使ってコミュニケーションする能力に重点を置いた試験です。
ここがJLPTとの大きな違いです。
BJTでは、会議、商談、電話対応、社内文書、ビジネス文書、プレゼンテーションなど、実際の仕事の場面を想定した日本語能力が問われます。また、相手との人間関係に応じた表現の使い分けや、日本のビジネス慣習への理解なども評価の対象となっています。
例えば、単純に「この日本語の意味が分かりますか」という問題だけではありません。
「誰が誰に話しているのか」「どのような立場の人なのか」「この場面ではどのような表現を使うのが適切なのか」といった、仕事上の人間関係や状況を踏まえて日本語を理解する力も重要になります。
これは、日本の会社で働く外国人にとっては、非常に実践的な能力と言えるでしょう。
JLPTと違い、BJTには「N1・N2」のような受験区分がありません
BJTの大きな特徴の一つが、JLPTのように「今回はN2を受ける」「今回はN1を受ける」という仕組みではないことです。
BJTは一度の試験を受験し、その結果が0~800点のスコアとして示されます。その点数に応じて、J5、J4、J3、J2、J1、J1+の6段階で評価されます。つまり、最初から特定のレベルを選んで受験する必要はありません。
現在のBJTのレベルは、おおむね次のようになっています。
J5:0~199点
J4:200~319点
J3:320~419点
J2:420~529点
J1:530~599点
J1+:600~800点
例えば420点を取ればJ2、530点を取ればJ1というように、受験した結果によって自分のレベルが決まります。BJTには「合格・不合格」という考え方はなく、スコアによって現在の日本語能力を確認できる仕組みです。
BJTはどんな問題が出る?
BJTは、全部で80問、約2時間の試験です。
大きく分けて、
第1部:聴解音声を聞いて、場面や発言の内容を理解する問題
第2部:聴読解音声だけでなく、写真・イラスト・資料などを見ながら、状況を判断する問題
第3部:読解語彙・文法、表現、文章の内容などを理解する問題
という3つの構成になっています。
特にBJTらしいのが、「日本語そのもの」だけではなく、状況を理解して判断することが求められる点です。
例えば、会社の中で上司と部下が話している場合、同じ内容でも立場によって使われる言葉は変わります。敬語や丁寧な表現だけでなく、「この人は誰に対して話しているのか」「なぜこのような言い方をしているのか」「この状況では何をするのが適切なのか」といった情報を読み取る必要があります。
そのため、JLPTで高いレベルを取得している人であっても、BJTを初めて受けると「思ったより難しい」と感じる可能性があります。
「BJT 400点=N2、480点=N1」と考えていい?
ここは少し注意が必要です。
入管関係の情報などを見ると、BJTについて「400点以上」「480点以上」という数字を目にすることがあります。
実際、出入国在留管理庁の資料では、一定の基準において、BJT400点以上がJLPT N2相当、BJT480点以上がJLPT N1と同等の日本語能力を有するものとして扱われるケースがあります。例えば、高度人材ポイント制では、N1相当の日本語能力についてBJT480点以上、N2相当についてBJT400点以上がポイント付与の対象として明記されています。
ただし、これは「BJTのJ2がN1」「BJTの480点がJLPT N1」という意味ではありません。
BJTそのもののレベルでは、480点はJ2(420~529点)に該当します。
つまり、試験として測っている能力の種類が違うため、単純に「JLPT N1=BJT○点」と置き換えることはできません。
ここは、BJTを受験する際にぜひ覚えておいてほしいポイントです。
BJTは「JLPTの代わり」ではなく、「別の方向から日本語能力を見る試験」
JLPTが、日常生活を含む幅広い場面で使われる日本語をどの程度理解できるかを段階的に測る試験だとすれば、BJTはその日本語を仕事の場面でどのように理解し、使い、状況に応じて対応できるかという部分に、より重点を置いた試験だと言えます。
そのため、「JLPT N1を持っているからBJTも簡単」とは限りません。
逆に言えば、仕事で日本語を使う人にとっては、BJTで高いスコアを取ることは、単なる語彙力や文法力だけではなく、ビジネス上のコミュニケーション能力を身につけていることを示す一つの材料になります。
BJTの公式資料でも、上位レベルになるほど、会議や商談、電話対応、社内文書、ビジネス文書、プレゼンテーションなど、より複雑なビジネス場面での日本語能力が求められることが示されています。
BJTの大きなメリットは「受験のタイミング」
JLPTとBJTを比較したとき、今回特に注目したいのが受験できるタイミングの違いです。
JLPTは原則として年2回です。一方、BJTは全国のテストセンターで、空席がある場合にはほぼ毎日実施されており、受験者自身が日時と会場を選んで申し込むことができます。また、受験後に次の受験まで3か月空ける必要があります。
そのため、「JLPTの申し込みに間に合わなかった」「次のJLPTまで待てない」という人にとって、BJTは日本語能力を証明するためのもう一つの選択肢になる可能性があります。
もちろん、提出先によって受け付けている試験や必要なレベルは異なります。
「BJTならJLPTの代わりになる」と一律に考えるのではなく、就職先、学校、在留資格の申請先など、証明書を提出する相手がBJTを認めているか、何点以上を求めているかを事前に確認することが大切です。
受験料はJLPTより少し高い
2026年度現在、日本国内での受験料は、JLPTが7,500円(税込)、BJTが8,000円(税込)です。
BJTのほうが500円高くなりますが、JLPTのように年2回の試験日を待つ必要がなく、テストセンターの空席があれば都合のよい日時を選んで受験できるという点は、大きな違いです。
BJTを受けてみたい方へ
BJTの公式サイトでは、実際の問題を体験できる「テスト体験コーナー」やサンプル問題も公開されています。
JLPTと同じように、いきなり受験を申し込むのではなく、まず実際の問題を解いてみることをおすすめします。
特にBJTの場合は、一般的な日本語の問題だけではなく、ビジネスの場面や状況判断、敬語、人間関係などを含む問題が出題されるため、「普段日本語を使っているから大丈夫」と思っていても、意外に難しく感じるかもしれません。
まずサンプル問題を解いてみて、自分がどの程度対応できるのかを確認してから受験を検討するとよいでしょう。
BJT公式サンプル問題・テスト体験
日本語能力を証明する方法は、JLPTだけではありません。
「次のJLPTまで待てない」「仕事で使う日本語能力を確認したい」「自分の日本語がビジネスの場面でどこまで通用するのか試してみたい」という方は、BJTという選択肢についても一度調べてみてはいかがでしょうか。
ただし、試験によって測定する能力や利用できる場面は異なります。特に在留資格や就職、進学などの目的で証明書を提出する場合は、必要とされている試験の種類とスコアを必ず提出先に確認してから受験することをおすすめします。
JLPTとBJTは、どちらが「上」なのかを比べるものではありません。
日常生活を含む幅広い日本語能力を段階的に確認したいのか、それとも仕事やビジネスの場面で必要となる日本語コミュニケーション能力を確認したいのか。
目的に合わせて試験を選ぶことで、自分の日本語能力をより正確に知り、必要な場面で活用できる証明につなげることができます。




コメント