長野県外国人政策検討懇談会を開催
- 川西ケンジ

- 6 日前
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外国人住民4万8千人時代を迎えた長野県、多文化共生政策の方向性と課題を議論
長野県は令和8年6月11日、「令和8年度第1回長野県外国人政策検討懇談会」を開催した。会議では、多文化共生等県民意識調査や外国人材に関する実態調査の結果を踏まえ、外国人住民の定住化が進む県内社会の現状と課題、そして今後の施策の方向性について議論が行われた。
県によると、令和7年6月末時点の県内在留外国人数は48,288人となり、この10年間で約1.5倍に増加した。また、外国人労働者数も令和7年10月末時点で30,672人に達し、令和2年からの5年間で10,814人増加している。人口減少や人手不足が深刻化する中、外国人住民や外国人労働者は、すでに地域社会や地域経済を支える重要な存在となっている。
しかしその一方で、日本人住民と外国人住民との間には依然として言語や文化、生活習慣の違いによる課題が存在している。今回の懇談会は、その現状をデータによって確認しながら、今後の政策の方向性を検討する場として位置付けられた。
誰がこの議論に参加したのか
今回の懇談会には、大学、専門学校、自治体、企業、金融機関、外国人支援団体、外国人コミュニティなど、さまざまな分野から委員が参加した。
座長を務めたのは明治大学国際日本学部教授の山脇啓造氏である。移民政策、多文化共生政策、外国人住民の社会統合を専門とし、全国の自治体における多文化共生施策の研究や提言を長年行ってきた研究者として知られている。長野県が今回の議論を単なる地域課題ではなく、全国的な外国人政策の流れの中で位置付けようとしていることがうかがえる人選といえる。
教育分野からは、信州大学グローバル化推進センター教授であり、NPO法人中信多文化共生ネットワーク理事長でもある佐藤友則氏が参加した。大学教育と地域の外国人支援の双方に関わっており、外国人住民の生活実態や地域日本語教育について現場感覚を持つ委員の一人といえる。
また、丸の内ビジネス専門学校の理事長・校長を務める内川小百合氏も参加した。同校は留学生教育や専門人材育成にも取り組んでおり、外国人留学生の教育や就職支援の視点が期待される。
地域の多文化共生支援の現場からは、地球人ネットワーク in こまがねの安部宏美氏が参加した。同団体は県内でも比較的長い歴史を持つ多文化共生団体として知られ、外国人住民支援や国際交流活動を継続して行っている。
外国人コミュニティを代表する立場としては、長野県ベトナム交流協会副会長であり、在日ベトナム女性協会長野支部長でもあるグエン・ハー・チュイ氏が参加した。近年、長野県ではベトナム出身者の増加が著しく、県内の外国人コミュニティの変化を象徴する存在ともいえる。
企業関係者としては、長野電鉄株式会社代表取締役社長の久保田敏之氏、信州ハム株式会社総務部長の佃芳典氏が参加した。交通分野や製造業分野は外国人材との関わりが深く、人手不足への対応や外国人雇用の実情について現場の視点を提供する役割が期待される。
経済分野からは、日本政策金融公庫常務取締役の横尾光輔氏が参加した。県内企業との接点が多い立場から、人材不足や地域経済の課題について意見を述べることが期待される。
さらに、合同会社日本社会設計代表社員の安井誠氏も委員として参加している。同社は外国人材や地域社会の課題に関する調査・研究・政策提言などに関わっており、行政や企業とは異なる視点からの意見が期待された。
また、自治体代表として安曇野市市民生活部人権共生課長の堀金一惠氏も委員に名を連ねていたが、当日は欠席となった。
こうした顔ぶれを見ると、今回の懇談会は従来のように行政や支援団体のみで構成された会議ではなく、研究者、教育関係者、企業、金融機関、地域支援団体、外国人コミュニティなど、多様な立場から意見を集めようとしたことがうかがえる。
特に目を引くのは、近年急増しているベトナム人コミュニティの代表が参加している点である。長野県内の外国人住民構成の変化を考えれば、現実的かつ象徴的な人選ともいえる。
一方で、委員選定基準は公表されていないため、なぜ各委員が選ばれたのかは明らかではない。以下はあくまでも公開されている経歴や活動内容から推測できる範囲の考察となる。
その上で見ると、大学、支援団体、行政、既存企業などの視点は比較的厚く反映されている一方で、外国ルーツの企業経営者、多文化共生を主たる事業とする民間企業、ブラジル人やフィリピン人、中国人など他の主要コミュニティの代表、外国人二世・三世世代、技能実習生や特定技能人材といった当事者層の姿はあまり見えてこない。
限られた人数ですべての立場を網羅することは難しい。しかし、外国人住民の定住化が進む中で、誰の声を政策形成の場に反映させるのかという課題は、今回の委員構成からも見えてくる。
日本人住民の意識から見えた現状
今回報告された県民意識調査によると、日本人住民の57.7%が「外国人との関わりが全くない」と回答し、「ほとんどない」と答えた23.2%を合わせると、80.9%が日常的な接点を持っていないことが分かった。
外国人住民が増加している一方で、実際には多くの日本人が外国人と接する機会を持たないまま生活している実態が浮かび上がっている。
外国人受入れについては、「必要がある」「どちらかといえば必要がある」が39.3%であったのに対し、「必要ない」「どちらかといえば必要ない」は34.7%となった。賛成・反対の双方が一定数存在しており、県民の意見が大きく分かれていることがうかがえる。
受入れに肯定的な人からは、人手不足の解消や地域社会の維持を期待する声が多く見られた。一方で、否定的な人からは治安への不安や社会的負担への懸念が挙げられた。また、日本人住民の55.7%が「日本の生活習慣やマナーを学ぶ機会の提供」を行政に求めており、外国人住民の生活ルール理解を重視する傾向が見られた。
さらに、「外国人には日本語を学んでほしい」と回答した人は78.1%に達した。その一方で、「日本人も外国語や外国文化を学ぶべきだ」と回答した人も71.8%に上っており、一方的な同化ではなく相互理解の必要性を感じている県民も少なくないことが分かった。
外国人住民の意識から見えた課題
一方、外国人住民を対象とした調査からは、日本人住民とは異なる課題や期待が見えてきた。
調査では、75.2%の外国人住民が何らかの形で日本人との関わりがあると回答した。また、76.9%が「今よりも日本人との交流を増やしたい」と回答しており、多くの外国人住民が地域社会との接点を求めていることが分かった。
生活上の困りごとについては、「日本語・コミュニケーション」が55.9%で最も高く、次いで「お金」「仕事や職場環境」などが続いた。特に日本語の問題は多くの場面に影響を与えている。病院の利用に関する設問では、「症状をうまく説明できない」「医師や職員の説明が理解できない」といった回答が目立った。
また、行政手続きや学校とのやり取り、職場でのコミュニケーションなどでも、日本語能力が生活の質を左右する重要な要素となっていることがうかがえる。日本語学習については68.5%が学習経験があると回答した。
学習の目的としては、
・日本で生活するため・仕事のため・日本人との交流を増やすため・子どもの教育のため
などが挙げられている。
さらに、行政に求める支援として最も多かったのも「日本語を学ぶ機会の提供」であり、日本語教育への需要の高さが改めて確認された。
興味深いのは定住意向に関する結果である。「今後も日本で暮らしたい」と回答した人は40.4%に達した。しかし、「現在住んでいる地域でずっと暮らしたい」と回答した人は29.2%にとどまった。つまり、日本への定住意思はあるものの、現在住んでいる市町村や地域への定着については必ずしも同じではないことが分かる。
外国人住民に長野県を選び続けてもらうためには、単に仕事を提供するだけではなく、生活環境や教育、地域コミュニティとのつながりを含めた総合的な環境整備が求められていることがうかがえる。
調査結果は県内の実態をどこまで反映しているのか
今回の懇談会では、日本人住民、外国人住民、企業を対象とした意識調査の結果が示された。これらの調査は今後の政策立案における重要な基礎資料となる一方で、その解釈に当たっては慎重な検討も必要である。
長年にわたり長野県内で多文化共生事業に携わってきた筆者は、今回の調査結果そのものを否定するつもりはない。しかし、調査結果を見る際には「何人が回答したか」だけでなく、「どのような人々が回答したのか」という視点も同じくらい重要ではないかと考えている。
長野県内には外国人住民比率が1%未満の地域もあれば、数%を超える地域も存在する。また、地域によっては特定の国籍やコミュニティが集中しているケースもある。外国人住民との接点がほとんどない地域に住む日本人と、日常的に外国人住民と関わりながら生活している日本人とでは、多文化共生に対する認識や課題意識が大きく異なる可能性がある。
特に、外国人住民の増加によって実際に課題や摩擦を経験している地域では、ゴミ出しルール、自治会活動、生活マナー、学校教育、防災活動など、より具体的な問題に直面している場合もある。
筆者は、多文化共生政策を考える上で最も重要なのは、多文化共生に満足している人々の声だけではなく、不安や不満、困りごとを抱えている人々の声であると考えている。なぜなら、行政が優先的に解決すべき課題は、まさにそのような現場で発生しているからである。
例えば、外国人住民比率が極めて低い地域では、「外国人との共生」に対する意識そのものが希薄になりやすい。一方で、外国人住民比率が高い地域では、良い意味でも悪い意味でも外国人住民との接触頻度が高くなり、実際の生活上の課題が見えやすくなる。しかし、今回公表された調査結果からは、そのような地域差を読み取ることは難しい。
その意味では、今後の調査においては、
・外国人住民比率が高い地域・外国人住民比率が中程度の地域・外国人住民比率が低い地域
といった区分ごとの分析も行うことで、より実態に近い課題把握につながるのではないかと思われる。
外国人住民調査についても、筆者は同様の課題があると考えている。
今回の調査では約1,000人の外国人住民が回答しており、県内外国人住民全体のおよそ2%に相当する。日本人住民調査と比較すると回答割合はかなり高く、一見すると実態をよく反映しているようにも見える。しかし、多文化共生の現場では、どのような外国人が回答したかによって結果が大きく変わることが知られている。
例えば、技能実習生や育成就労制度の対象者は制度上日本語学習が求められている。一方で、定住者や永住者にはそのような義務はない。当然ながら、日本語学習への関心や必要性は在留資格によって大きく異なる。また、日本語能力そのものも大きく異なる。来日して間もない外国人と、日本で十年以上生活している外国人では、日本語学習に求める内容も、行政に求める支援も変わってくる。
さらに、外国人住民と一言で言っても、
・国籍・在留資格・居住地域・来日年数・日本語能力
によって置かれている状況は大きく異なる。
ブラジル人、ベトナム人、中国人、フィリピン人では、来日の経緯も、地域社会との関わり方も、抱えている課題も異なる。日本で生まれ育った外国ルーツの若者と、来日したばかりの技能実習生とでは、同じ「外国人住民」という分類であっても実態は大きく異なる。そのため、外国人住民全体を一つの集団として分析するだけでは、現実に存在する課題が見えにくくなる可能性がある。
また、この種の調査は日本語教室、外国人支援団体、受入企業、学校関係者などを通じて周知されることが少なくない。その場合、日本語学習や地域活動への関心が高い外国人住民が回答しやすくなる可能性もある。結果として、「日本語を学びたい」「日本人との交流を増やしたい」といった回答が実態以上に強く表れる可能性も否定できない。もちろん、それらの回答が間違っているという意味ではない。
しかし、その結果を県内すべての外国人住民の意見として捉えるのであれば、回答者の属性をより詳細に分析する必要があるのではないかという疑問も残る。
また、今回の調査では、日本人住民調査がおよそ0.1%の回答率であるのに対し、外国人住民調査は約2%に達している。単純比較はできないものの、この差は興味深い。外国人住民調査の方が相対的に高い割合の回答を集めているという事実は、調査の周知方法や配布経路が外国人住民に届きやすかった可能性も示唆している。逆に言えば、日本人住民調査は、県民全体の意見を把握するという観点から見ると、回答数や回答者属性についてさらに検証の余地があるとも考えられる。
調査結果は重要である。しかし、多文化共生という複雑なテーマを扱う以上、「何人が回答したか」だけではなく、「誰が回答したのか」をより細かく分析することによって、県内の実態をより正確に把握できる可能性があると筆者は考えている。
多文化共生は施策なのか、それとも目標なのか
今回示された資料では、「多文化共生」「日本語教育」「外国人材受入れ」「外国人児童生徒支援」などが並列的な施策として整理されている。しかし、多文化共生に長年携わってきた筆者は、この整理の仕方そのものにも以前から疑問を抱いている。
なぜなら、日本語教育、相談体制整備、防災対応、医療支援、外国人児童生徒支援、外国人材受入れなどは、多文化共生を実現するための手段であって、多文化共生そのものではないからである。言い換えれば、多文化共生は一つの施策ではなく、それらすべての施策が目指す最終目標であるべきではないだろうか。
ところが現在の行政資料では、多文化共生は他の施策と並列に配置されることが少なくない。筆者は、このこと自体が日本における多文化共生の理解が、この20年以上ほとんど進化していないことを示しているようにも感じている。
実際、日本には現在も多文化共生を定義する法律は存在しない。また、国として統一された公式定義も存在していない。現在、多くの自治体が採用している考え方は、2006年に総務省の研究会が公表した報告書に示された定義を事実上の出発点としている。
その内容は、
「国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的違いを認め合い、対等な関係を築きながら、地域社会の構成員として共に生きていくこと」
というものである。
この考え方は現在でも広く引用されている。しかし、その後約20年が経過した現在でも、多くの自治体は表現を多少変更しているだけで、本質的にはほぼ同じ定義を使い続けている。
しかし筆者は、問題はその定義の内容よりも、「多文化共生が実現された状態」が具体的に示されていないことにあると考えている。
現在の多文化共生政策では、「多文化共生の推進」や「多文化共生社会の実現」という表現が頻繁に使われる。しかし、その社会が具体的にどのような状態を指すのかについては、ほとんど議論されていない。
例えば行政が「環境問題を解決する」と言った場合、CO₂排出量を何%削減するのか、再生可能エネルギー比率をどこまで高めるのか、といった具体的な目標が設定されることが一般的である。一方、多文化共生の場合は、「実現する」という言葉だけが先行し、その到達点が明確に示されないことが多い。
筆者は以前から、「まず最初に定義すべきなのは多文化共生そのものではなく、多文化共生が実現された社会の姿ではないか」と主張してきた。
例えば、「車を作る」という目標だけでは何を作るのか分からない。SUVなのか、セダンなのか、軽自動車なのか、トラックなのか、レーシングカーなのか。目的が決まらなければ、必要な部品も設計も性能も全く異なる。タイヤ一つを取っても同じである。F1マシンのタイヤと軽自動車のタイヤは全く違う。サイズも構造も用途も異なる。しかし、「車を作る」という曖昧な目標しか存在しなければ、とりあえずタイヤを作ること自体が成果になってしまう。
筆者は現在の多文化共生政策にも、これと似た側面があるのではないかと感じている。日本語教室を増やした、相談窓口を設置した、交流イベントを開催した、防災資料を翻訳した。これらはいずれも重要な取組である。しかし、それらが最終的にどのような社会の実現につながるのかが明確でなければ、施策の成果を客観的に評価することも難しい。
極端な例を挙げれば、日本語教育を充実させることが目的なのか、外国人住民の定住促進が目的なのか、地域経済を維持することが目的なのか、日本人住民と外国人住民の相互理解が目的なのか、あるいはそれらすべてなのか。目指す社会像によって必要な施策の優先順位は大きく変わる。
実際、今回の懇談会でも、日本語教育、外国人材受入れ、外国人児童生徒支援、相談体制整備、防災対策など、多数の施策が紹介された。その内容を見る限り、長野県は全国の自治体の中でも比較的積極的に多文化共生施策を進めている自治体の一つであることは間違いない。しかし同時に、それらの施策が最終的にどのような社会を目指しているのかという議論については、まだ十分に深まっているとは言い難い。
外国人住民が増え続ける現在、多文化共生を単なるスローガンとして掲げる時代は終わりつつある。今後は「どのような社会を目指すのか」という理念だけではなく、「その社会をどのような状態として定義するのか」という議論そのものが求められているのかもしれない。
企業調査から見えた外国人材受入れの現実
今回の懇談会では、外国人住民や日本人住民だけでなく、県内企業を対象とした調査結果も報告された。人口減少や少子高齢化が進む中、外国人材の受入れは長野県の地域経済にとって避けて通れない課題となっている。
調査によると、58.2%の企業が「外国人材が必要である」と回答した。すでに県内の外国人労働者数は3万人を超えており、製造業、建設業、介護分野、農業などを中心に、外国人材なしでは事業運営が成り立たない職場も少なくない。
一方で、外国人材を受け入れている企業からは様々な課題も挙げられている。特に多かったのは、日本語によるコミュニケーションに関する問題である。仕事そのものは覚えられても、安全指導や業務上の細かな説明、職場内での人間関係づくりなどにおいて、日本語能力が大きな影響を与えていることがうかがえる。
また、文化や習慣の違いへの対応、生活支援、在留資格制度への理解なども企業側の負担として認識されている。さらに興味深いのは、外国人材を雇用していない企業の回答である。これらの企業の多くは、人手不足を感じながらも外国人材の採用に踏み切れていない。
その理由として、
・受入れ体制が整っていない・言葉の問題への不安がある・制度が複雑で分からない・文化や習慣の違いへの対応に不安がある
といった回答が目立った。
つまり、外国人材が必要であると考えながらも、受け入れるためのノウハウや体制が不足している企業が少なくないのである。この結果は、外国人材不足の問題が単純な採用の問題ではなく、企業側の支援体制や環境整備の問題でもあることを示している。
長野県はこうした課題を踏まえ、外国人材受入れワーキンググループを中心に、新たな支援策を展開していく方針を示した。
長野県が示した令和8年度の重点施策
今回の懇談会で最も多くの時間が割かれたのは、令和8年度に実施される具体的な事業と予算の説明であった。県は多文化共生施策を単独の事業としてではなく、教育、雇用、医療、防災、相談支援など複数の分野を横断する政策として位置付けている。
施策は大きく、
・多文化共生・地域日本語教育・外国人材受入れ・外国人児童生徒支援・相談体制整備・医療支援・防災対策
などの分野に整理されている。
そして、その中でも特に重点的に進められるのが地域日本語教育体制の強化である。
地域日本語教育の強化
県が令和8年度に最も重点を置いている分野の一つが、日本語教育体制の整備である。
県が実施した調査では、日本人住民の55.7%が「外国人に日本の生活習慣やマナーを学ぶ機会が必要」と回答し、外国人住民の40.1%が「日本語を学ぶ機会の充実」を求めている。また、企業調査でも、日本語によるコミュニケーションが大きな課題として挙げられており、日本語教育は住民、外国人、企業のいずれからも必要性が指摘されている分野となっている。こうした状況を受け、県は「長野県地域日本語教育の体制づくり事業」に8,844千円を計上した。
県内では現在76か所の地域日本語教室が運営されているが、その設置状況には地域差も見られる。県資料によれば、日本語教室が設置されているのは34市町村にとどまっており、外国人住民が居住していても十分な学習機会が確保されていない地域も存在する。こうした状況を踏まえ、県は地域日本語教育を一部の自治体やボランティア団体の取組としてではなく、県全体の基盤整備として位置付けている。
事業では、地域日本語教育コーディネーター4名を配置し、市町村や関係団体との連携を強化する。さらに令和8年度は伊那市を多文化共生モデル地域に指定し、日本語教育人材を重点的に派遣する方針が示された。伊那市では外国人住民の定住化が進んでおり、今後は地域日本語教育の運営体制や関係機関との連携モデルの構築を進め、その成果を他地域へ展開していくことも期待されている。
日本語教室の運営については、現在もボランティアへの依存度が高いことが課題として認識されている。県の資料によれば、日本語教室主催者の約6割がボランティア団体であり、多くの教室が地域住民の善意によって支えられている。一方で、担い手不足や高齢化も進んでおり、中心的な指導者が活動を続けられなくなった場合、教室そのものの継続が困難になるケースも懸念されている。そのため県は、従来のボランティア中心型から、自治体、企業、教育機関、支援団体などが役割を分担しながら支える「連携型」への転換を進めようとしている。
また、県は地域日本語教育を単なる語学学習の場としてではなく、地域社会への参加や生活基盤づくりのための重要なインフラとして位置付けている。日本語能力は職場でのコミュニケーションだけでなく、行政手続き、医療機関の利用、学校との連絡、防災情報の理解など、生活のあらゆる場面に関わる。そのため日本語教育の充実は、多文化共生政策全体を支える基盤施策の一つとして扱われている。
さらに、地理的な理由や勤務時間の関係で日本語教室に通えない外国人住民への対応として、「信州で暮らそうオンライン日本語教室事業」に1,965千円を計上した。この事業ではレベル別日本語講座に加え、長野県で生活する上で必要となる地域ルールや生活習慣、行政サービス、防災情報などを学ぶためのコンテンツも拡充される予定である。県はオンライン環境を活用することで、居住地や勤務形態に左右されない学習機会の確保を目指している。
今回示された方針からは、日本語教育を単なる外国人支援施策としてではなく、外国人住民が地域社会の構成員として生活し、働き、地域とつながるための基盤づくりとして捉えようとする県の姿勢がうかがえる。
新規事業「外国人との共生のためのパイロット事業」
令和8年度の新規事業として注目されるのが、「外国人との共生のためのパイロット事業」である。
県は本事業に2,847千円を計上し、市町村や企業が主体となって実施する多文化共生の取組を支援する制度を新たに創設した。
補助額は、
・市町村 上限100万円・企業 上限50万円
とされている。
県資料によると、対象となるのは外国人住民との共生を促進する先進的・モデル的な取組であり、地域の実情に応じた柔軟な事業展開が想定されている。
具体的には、
・地域住民と外国人住民との交流促進・外国人住民の地域定着支援・自治会活動や地域活動への参加促進・生活ルールや地域慣習への理解促進・地域課題の解決につながる取組
などが例として挙げられている。
これまでの多文化共生施策は県や市町村が主体となって実施するものが中心であった。しかし、外国人住民の増加や定住化が進む現在では、地域ごとに抱える課題や必要とされる対応が大きく異なっている。
例えば、製造業が集積する地域では外国人労働者との共生が課題となり、農業地域では季節労働者への対応が課題となる場合がある。また、外国人児童生徒が多い地域では学校や保護者との連携が重要になるなど、地域ごとに優先課題は異なる。
県はこうした状況を踏まえ、一律の事業を全県で実施するのではなく、市町村や企業が自ら地域課題を分析し、その解決に向けた取組を企画・実施できる仕組みを整備したものとみられる。
今回公表された資料では募集要件や審査基準などの詳細までは示されていないが、長野県が従来の「行政主導型」から「地域提案型」の多文化共生政策へと一歩踏み出そうとしていることを示す事業として注目される。
特に、地域に根差した民間企業や団体が主体となって取り組む事業も対象となっている点は特徴的である。これまで多文化共生分野では行政や支援団体が中心的役割を担うことが多かったが、本事業では企業側からの提案や実践も期待されている。
今後、どのような事業が採択されるのかによって、長野県が考える「多文化共生」の具体像や優先課題も見えてくる可能性がある。
交通ルールや生活ルールへの対応
県民意識調査では、日本人住民の55.7%が「外国人住民に対して日本の生活習慣やマナーを学ぶ機会が必要」と回答しており、生活ルールに関する不安や課題意識が県民の間で一定程度存在していることが明らかとなった。
こうした結果を受け、県は令和8年度、くらし安全・消費生活課と連携しながら、外国人住民向けの交通ルール啓発事業を実施する。事業費は2,115千円で、自転車利用に関するルールや安全運転に関する啓発動画、多言語チラシ等を制作・配布する予定である。
長野県内では近年、外国人住民の増加に伴い、交通ルールだけでなく、ごみ出しルール、自治会活動、集合住宅での生活マナーなど、地域生活に関わる様々なルールの周知が課題として指摘されている。県はこれらの問題について、外国人住民側の理解不足だけでなく、情報そのものが十分に伝わっていないことも要因の一つと捉えている。
特に自転車は、技能実習生や特定技能外国人、留学生など、自動車を所有していない外国人住民にとって主要な移動手段の一つとなっている。そのため、交通ルールの周知は単なる安全対策にとどまらず、地域社会とのトラブル防止や相互理解の促進にもつながる取組として位置付けられている。
県は今回の事業を通じて、ルール違反を取り締まることだけを目的とするのではなく、外国人住民が地域社会の一員として安心して生活できる環境づくりと、日本人住民との不要な摩擦の予防を目指している。
外国人材受入れ支援の強化
外国人材受入れワーキンググループでは、今後予定されている国の制度改正も見据えた施策が示された。
特に大きな転換点として位置付けられているのが、令和9年(2027年)4月から開始予定の「育成就労制度」である。
育成就労制度は、これまで長年運用されてきた技能実習制度に代わる新制度として創設される予定であり、外国人材を単なる短期的な労働力として受け入れるのではなく、人材育成や定着を重視する仕組みへと転換することを目的としている。
長野県では、こうした制度変更に伴い、今後は外国人材の県内定着がさらに進む可能性があると見ている。現在でも県内の外国人労働者数は30,672人(令和7年10月末時点)に達しており、令和2年からの5年間で10,814人増加した。人口減少や高齢化が進む中、外国人材はすでに県内産業を支える重要な担い手となっている。
しかし、企業調査では外国人材の必要性を感じている企業が58.2%に達する一方で、「受入れ体制が整っていない」「日本語でのコミュニケーションに不安がある」「制度が複雑で分からない」といった理由から、受入れに踏み切れない企業も少なくないことが明らかになった。こうした課題を踏まえ、県は令和8年度から新たに「外国人材日本語習得支援事業」を開始する。予算額は13,582千円である。
この事業では、企業が実施する日本語教育や技能検定対策、日本語能力向上のための研修等に要する経費を補助する。補助上限額は1事業者あたり15万円となっている。
県は、日本語能力の向上が単に職場での意思疎通を改善するだけでなく、職場定着やキャリア形成、安全管理の向上にもつながると考えている。企業側にとっても、日本語教育を外国人本人任せにするのではなく、受入れ企業自身が人材育成に関与する体制づくりが求められているとの認識が背景にある。また、「外国人材受入企業支援事業」には13,927千円が計上された。
同事業では行政書士による相談窓口を設置し、
・在留資格制度・受入れ手続き・監理団体・登録支援機関・各種制度運用
などに関する相談を受け付けている。
資料によると、令和8年2月末時点で286件の相談実績があり、多くの企業が外国人雇用に関する制度理解や実務対応に課題を抱えていることがうかがえる。さらに、人材定着やキャリア形成をテーマとした企業向けセミナーを年9回開催する予定であり、外国人材を受け入れる企業側の理解促進や体制整備も進めていく方針である。
介護分野で進む外国人材受入れ
外国人材受入れの中でも、特に深刻な人材不足への対応が求められているのが介護分野である。長野県は全国的にも高齢化が進んでいる地域の一つであり、介護人材の確保は喫緊の課題となっている。県は外国人介護人材の受入れと定着を重点分野の一つに位置付け、複数の支援事業を実施している。
令和8年度予算では、
・介護人材確保対策事業 9,520千円・外国人介護人材受入支援事業 6,401千円・外国人介護人材キャリア形成支援事業 14,568千円
が計上された。
受入れ支援では、外国人介護人材の訪日前研修に対し1人あたり最大5万円を補助する。また、県内事業所が外国人介護人材の住居を確保する際の負担軽減を目的として、住宅借上げ費用への支援も実施される。補助額は1事業所あたり最大20万円であり、令和8年度からは従来設けられていた期間要件も撤廃されるなど、制度の利用しやすさが向上している。さらに、EPA(経済連携協定)に基づいて来日する介護福祉士候補者を受け入れる施設への支援も継続される。
介護現場では、日本語によるコミュニケーション能力が利用者との信頼関係や介護サービスの質に直結することから、日本語学習支援や資格取得支援も重要な施策として位置付けられている。県はこのため、外国人介護人材キャリア形成支援事業を通じて、介護福祉士資格取得に向けた支援や、日本語能力向上支援を継続する。また、多言語翻訳機の導入支援も行い、現場でのコミュニケーション環境の改善を図る。
介護分野では、外国人材を単なる人手不足対策として受け入れる段階から、長期的に地域社会の担い手として定着してもらう段階へと移行しつつある。今回示された各事業からも、県が外国人介護人材を一時的な労働力としてではなく、将来的に地域を支える専門人材として育成・定着させる方向性を強く意識していることがうかがえる。
外国人児童生徒への支援
外国人住民の増加に伴い、学校現場における外国人児童生徒への対応も重要な課題となっている。
長野県内では、外国籍の児童生徒や、日本語指導が必要な児童生徒が年々増加している。一方で、居住地域によって支援体制には差があり、十分な日本語指導を受けられないケースや、学校側が対応に苦慮するケースも少なくない。こうした状況を受け、県は外国人児童生徒等教育ワーキンググループを中心に、日本語指導体制の強化とインクルーシブ教育の推進を進めている。
県が掲げるインクルーシブ教育は、外国籍かどうかに関わらず、また障がいの有無などに関わらず、すべての子どもが共に学ぶ教育環境を目指すものである。外国人児童生徒支援についても、単に日本語を教えるだけではなく、学校生活全体への参加や学習機会の保障という観点が重視されている。
令和8年度は、日本語初期指導のあり方についての研究を進めるため、「日本語初期指導研究コーディネーター」を配置する。また、大学教員や日本語指導の中核教員などで構成される「キャラバン隊」を県内4ブロックへ派遣し、市町村や学校現場の実情に応じた助言や支援を行う。
キャラバン隊は年間16回程度の派遣が予定されており、日本語指導の方法だけでなく、学校全体として外国人児童生徒を受け入れる体制づくりや教員への助言なども担うこととされている。
また県は、外国人児童生徒への支援を特別な施策として切り離して考えるのではなく、現在進めている教育改革との連携も視野に入れている。
資料では、小学校1年生における25人規模学級編制の研究や、学びの多様化学校、ウェルビーイング実践校「TOCO-TON(トコトン)」などの取組との連携も示された。少人数学級の利点を活かしながら、多様な背景を持つ子どもたちが共に学べる教育環境の構築を目指している。
教職員配置についても、日本語指導が必要な児童生徒への対応として加配教員が配置されている。県資料によると、外国人子女等日本語指導対応として31人、外国籍児童生徒支援のための教員として10人が配置されている。
さらに、高校段階においても支援が継続される。「高校生活支援事業」には3,280千円が計上されており、帰国生徒や外国籍生徒を対象とした相談支援体制を拡充する。相談対応時間は従来の950時間から1,020時間へ増加する予定であり、進学や就職、学校生活全般に関する支援が行われる。
外国人児童生徒への支援は、単に学校教育の問題にとどまらない。子どもたちの学習環境や進路選択は、そのまま将来の地域社会への参加や定住にもつながる。
長野県は近年、外国人材の受入れや定住支援を積極的に進めているが、外国人住民の定住化が進むほど、子ども世代への教育支援の重要性はさらに高まっていくと考えられる。日本語指導だけでなく、学校生活への適応、進学支援、保護者との連携などを含めた総合的な支援体制の構築が、今後の大きな課題の一つとなりそうだ。
医療・相談・防災分野での取組
外国人住民が地域社会の中で安心して生活していくためには、日本語教育や就労支援だけでなく、行政手続き、医療、防災、福祉など生活全般を支える体制の整備も欠かせない。長野県は令和8年度において、多言語による相談体制の維持・強化に加え、情報発信手段の拡充や災害時支援体制の整備など、生活支援分野にも継続して取り組む方針を示した。
多文化共生相談センターの運営
県内の外国人住民を支える中核的な相談窓口となっているのが「長野県多文化共生相談センター」である。同センターには18,156千円の予算が計上されており、在留資格、就労、医療、福祉、教育、子育てなど幅広い相談に対応している。
資料によると、センターには母語相談員5名が配置されており、電話通訳サービスも活用しながら15言語以上で相談を受け付けている。令和8年2月末時点では1,479件の相談実績があり、外国人住民の日常生活を支える重要なインフラの一つとなっている。
外国人住民の増加に伴い、生活上の困りごとも多様化している。相談内容は在留資格や雇用だけでなく、住宅、医療、子育て、教育、家庭問題など幅広い分野に及んでおり、多文化共生相談センターは各行政機関や専門機関につなぐ総合窓口としての役割も担っている。
AIチャットボットによる情報発信の強化
外国人住民からは、「必要な情報がどこにあるのか分からない」「行政情報にアクセスしにくい」といった声も少なくない。こうした課題への対応として、県は令和8年度から新たに「長野県公式ホームページへの対話型AIチャットボット導入事業」を実施する。
事業費は14,597千円。
導入されるAIチャットボットは、多言語および音声による入出力に対応し、県民が必要な行政情報へより容易にアクセスできる環境づくりを目指しており、サービス開始は令和8年10月を予定している。
これまで外国人住民は必要な行政情報を探すために複数のページを閲覧する必要があったが、AIチャットボットの導入により、質問形式で必要な情報へアクセスできる環境整備が期待されている。
また、県ホームページの多言語翻訳機能にも5,494千円が計上されており、主要な行政情報や報道発表資料などを複数言語で提供する体制の強化も進められている。外国人住民の増加に伴い、行政サービスそのものだけでなく、その情報をどのように届けるかが大きな課題となっており、今回の取組はその改善を目的としたものと位置付けられている。
ヤングケアラーへの通訳支援
外国人家庭の中には、日本語による意思疎通が難しい保護者に代わり、子どもが通訳役を担っているケースも存在する。病院や学校、行政窓口などで子どもが大人の通訳を担うことは、本人に大きな心理的負担を与えるだけでなく、本来の学習や生活にも影響を及ぼす可能性がある。
県はこうした課題への対応として、「ヤングケアラー外国語通訳派遣支援事業」を実施している。事業費は6,511千円。専門のコーディネーターを配置し、必要に応じて通訳者を派遣することで、子どもが通訳役を担わなくても済む環境づくりを進めている。令和8年2月末時点では107件の派遣実績が報告されている。
医療通訳体制の整備
医療分野においても、日本語によるコミュニケーションは大きな課題となっている。今回の県民意識調査でも、外国人住民が病院利用時に感じる困難として、日本語による説明の理解や症状説明の難しさが挙げられていた。
県はこうした課題への対応として、「長野県医療通訳コールセンター」を運営している。事業費は1,369千円。コールセンターでは24時間365日、22言語に対応した電話通訳サービスを提供しており、外国人患者と医療機関との円滑なコミュニケーションを支援しており、令和8年2月末時点で298件の利用実績が報告されている。
また、令和8年度からは事業所管が県民政策課から医療政策課へ移管されており、医療分野としての専門性をより重視した運営体制へ移行している。
災害時の外国人支援体制
長野県は地震や豪雨などの自然災害リスクを抱えており、災害発生時に外国人住民へ必要な情報を迅速に届ける体制づくりも進めている。「災害時の外国人支援体制整備事業」では、県総合防災訓練に合わせて災害多言語支援センターの設置・運営訓練を実施する。令和8年度は大町市での実施が予定されている。
また、有事の際に通訳や翻訳を担う人材の育成も進められており、新たに20〜30人規模の通訳・翻訳ボランティアを養成する方針が示された。さらに県は、宗教や文化的背景の違いにも配慮した防災備蓄を継続している。
資料によると、災害救助基金を活用し、ハラール認証を受けたアルファ化米などの備蓄食料を計画的に更新しており、これまでに27,100食が整備されている。災害時における外国人支援は、単に言語の問題だけではなく、食文化や生活習慣への配慮も含めた対応が求められていることがうかがえる。
住まいと地域生活への支援
外国人住民の定住化が進む中、住宅や地域コミュニティとの関係づくりも重要な課題となっている。
県営住宅では、中国語、ポルトガル語、英語による「入居者のしおり」を整備しているほか、外国人入居者が多い地域において多言語対応職員を配置している。伊那地域にはポルトガル語対応職員、飯田地域には中国語対応職員を配置し、自治会活動や地域ルールに関する説明、生活上の相談対応などを行っている。
外国人住民の定住化が進むにつれ、住宅は単なる居住の場ではなく、地域社会への参加の入口ともなる。外国人住民の増加に伴い、ごみ出しルールや自治会活動、地域行事への参加など、住宅を起点とした地域課題も増えている。県は多言語による情報提供や相談対応を通じて、入居者と地域住民双方の負担軽減を図ろうとしている。
懇談会から見えた今後の課題
今回の懇談会では、多文化共生や外国人材受入れに関する幅広い事業や予算が示された。日本語教育、相談体制、医療、防災、外国人材支援など、県が多方面にわたり取組を進めていることは確認できた。
一方で、今回示された県民意識調査や外国人材調査は、現状把握のための重要な資料ではあるものの、それぞれの課題が生じている背景や原因については必ずしも十分に分析されているとは言い難い。
例えば、日本人住民の多くが外国人との接点を持っていないことや、外国人住民が日本語に困難を抱えていることは明らかになったが、なぜ交流が生まれにくいのか、なぜ日本語学習が十分に進まないのかといった構造的な要因については、今後さらに検討が必要である。
また、企業調査では外国人材を必要とする企業が過半数を占める一方で、受入れ体制の未整備や制度理解への不安が課題として挙げられた。しかし、企業側が実際にどのような支援を必要としているのか、また既に外国人材の定着に成功している事例から何を学ぶべきなのかについては、今回の資料からは十分に読み取ることができなかった。
さらに、多文化共生施策の多くが行政、支援団体、ボランティア、日本語教室などを中心に構成されている一方で、外国人住民を日常的に雇用している企業や、地域社会の中で独自の取組を行っている民間事業者の知見がどの程度政策形成に反映されているのかについては、引き続き注視する必要がある。
今回の懇談会の構成を見ても、大学関係者、支援団体、企業関係者、外国人コミュニティ関係者など幅広い分野から参加者が選ばれている一方で、その選定基準や代表性については明らかにされていない。今後、外国人住民の増加と定住化が進む中では、より多様な立場の声をどのように政策へ反映していくのかも重要な課題となるだろう。
令和9年4月には育成就労制度の開始も予定されており、外国人住民の長期定着や家族帯同の増加が見込まれている。今後の多文化共生政策には、日本語教育や生活支援の充実だけでなく、地域社会そのものが変化することを前提とした議論が求められている。




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