ヤングケアラー支援をみんなで考える研修会に参加
- 川西ケンジ

- 9 時間前
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~「支援を抱え込まない」ために、支援者同士の横のつながりを考える~
2026年9月8日、松本市勤労者福祉センターにて、長野県が主催し、社会福祉法人長野県社会福祉協議会が委託を受けて実施する「ヤングケアラー支援をみんなで考える研修会」が開催されました。今回は「ヤングケアラー支援を抱え込まない~支援者と地域をつなぐ連携のヒント~」をテーマに、長野大学社会福祉学部教授の片山優美子氏による講演のほか、参加者同士がそれぞれの立場から日頃の支援における悩みや課題、経験を共有するワークショップが行われました。ヤングケアラーという言葉や支援制度について学ぶだけではなく、「どうすれば支援を必要としている人を実際の支援につなげられるのか」という、現場における具体的な課題について考える機会となりました。

講演では、精神疾患の現状や精神保健福祉士をはじめとするソーシャルワーカーの役割、ヤングケアラーが生まれる背景、そして子どもたちが抱える過度な負担について学びました。日本では諸外国と比較して精神科病床数が多く、平均在院日数も長いという特徴があり、精神疾患は誰にとっても無関係なものではなく、人生の途中で誰もが当事者になる可能性があります。家族の精神疾患やアルコール・薬物依存、がんや難病、ひとり親家庭の経済的困窮など、複数の課題が重なることで、本来大人が担うような介護や看病、家事、感情面での支えを子どもが過度に担うことがあります。中学生では17人に1人がヤングケアラーとされることも紹介され、決して一部の家庭だけに起こる特別な問題ではないことを改めて認識しました。また、家族のケアによって遅刻や不登校、学業への影響、友人関係の希薄化などにつながる場合がある一方、子ども自身が自分をヤングケアラーだと認識していないケースもあります。「できない子」ではなく「できなくなった子」という視点を持ち、その子の行動だけを見るのではなく、そこに至った家庭全体の背景を理解することの重要性が示されました。
ワークショップでは、参加者がそれぞれの現場で感じている「悩み」を共有しました。今回の参加者には、伊那市役所子育てサポート課子ども相談係、長野県発達障がい情報支援センター、信州大学長野県地域日本語教育コーディネーターをはじめ、民生委員、スクールソーシャルワーカー、保健福祉事務所、高等学校、障がい者支援に取り組むNPO法人、長野地域こどもカフェプラットフォーム、学習支援センター、介護支援事業所、教育・研究機関、子ども食堂、障害者支援センター、介護施設、まいさぽ、行政機関、社会福祉協議会関係者など、実に多様な立場の支援者が参加しました。同じテーブルには、伊那市役所子育てサポート課子ども相談係、長野県発達障がい情報支援センター、信州大学長野県地域日本語教育コーディネーター、そして多言語サポート支援サービスを通じて多文化共生を目指す株式会社PUTZ Network プツ・ネットワークから私が参加し、それぞれ異なる分野で活動するメンバーが集まりました。立場や専門分野が異なるからこそ、同じ課題を見ても捉え方が異なり、それぞれの経験から具体的なアイデアを出し合えたことは、今回のワークショップの大きな意義の一つでした。
私自身が今回のワークショップで「悩み」として共有したのは、支援機関同士の「横のつながり」の難しさです。地域には、行政機関、社会福祉協議会、NPO法人、地域団体、企業、子ども食堂、学習支援、介護・障害福祉関係機関など、実際には非常に多くの支援資源があります。しかし、それぞれに制度上の役割や立場があり、情報提供や他機関の紹介にも一定の制約があります。例えば、行政機関では、特定の民間事業者を直接紹介することが難しい場合があります。そのため、支援を必要としている人が「助けてほしい」と相談しても、最初の相談窓口から提供できる情報や選択肢が限定されてしまうことがあります。さらに、民間の支援機関についても、活動資金や人員、対応できる回数、所得要件など、それぞれ異なる制約を抱えています。支援制度が存在していることと、実際にその人が必要な支援へたどり着けることの間には、まだ見えにくい壁があるのではないかと感じています。
そのことを強く感じたのは、実際の外国人家庭への支援経験からです。経済的な困難を抱えている外国人家庭に対して、利用できる公的な支援として「まいさぽ」につなぐことはできても、支援には回数や所得などの条件があります。また、世帯として一定の収入があったとしても、借金やその他の事情によって実際に自由に使えるお金がほとんど残っていないという家庭もあります。公的制度だけでは十分な支援につながらない場合、例えば子どもたちだけでも安心して食事ができるように、地域の子ども食堂につなげられないかと考えることがあります。しかし、地域には実際に多くの子ども食堂が存在していても、その情報を一つにまとめて、必要な人が簡単に検索できる仕組みは必ずしも十分ではありません。インターネットで探しても、情報が古かったり、活動団体自身ではなく別の団体やメディアが過去に紹介した情報しか見つからなかったりすることもあります。特にボランティアや地域住民によって運営されている活動では、情報発信そのものに人手を割くことが難しいという現実もあります。
こうした経験から、私は「支援機関を増やすこと」だけではなく、すでに地域に存在している支援資源同士を、どのようにつなぐかが非常に重要なのではないかと考えています。例えば、ある行政の相談窓口が制度上の理由から特定の民間団体を直接紹介できない場合でも、その窓口から紹介可能な別の機関につなぎ、そこからさらに必要な民間団体や地域の活動へとつなげていくことができれば、相談者が利用できる選択肢は大きく広がります。一つの機関がすべてを解決するのではなく、それぞれの機関が持っている「つながり」を次の支援につなげていくことで、制度や組織ごとの制約を補いながら、より多くの人を必要な支援へ届けられる可能性があります。これは、今回の研修のテーマである「支援を抱え込まない」という考え方を、支援者個人だけではなく、地域に存在する機関同士の関係そのものに広げて考えることでもあります。
長野県社会福祉協議会が取り組む「あんしん未来創造センター」の多文化共生プロジェクトでは、外国人支援に取り組むNPO、行政、企業、地域団体などの連携体制を構築し、関係機関が情報を共有しながら支援策を協議・実行するプラットフォームづくりが進められています。外国人支援・相談機関連携ネットワークの構築、コミュニティ通訳の普及拡大、相互理解や対話・学習の機会づくりという3つの重点行動計画が掲げられており、私自身もこの取り組みに関わっています。こうした取り組みがすでに始まっていることは非常に意義深い一方で、今回の研修で共有した「横のつながり」という課題意識は、こうしたプロジェクトがあるからこそ解決したというものではありません。むしろ、同じような連携の仕組みやプラットフォームがさまざまな分野で生まれ、それぞれが互いにつながっていくことによって、支援の届く範囲をさらに広げられるのではないかと感じています。どれほど優れた制度や支援活動があっても、必要としている人との接点がなければ、その支援は届きません。地域にある多くの「良い取り組み」を孤立させず、互いの存在を知り、必要なときに次の支援へつなげられる関係をつくることこそ、これからの地域福祉において重要な課題の一つだと思います。
また、ワークショップでは、支援者と相談者との「距離の取り方」についても印象的な意見がありました。正面に座って向き合うよりも、横に並んで話すことで、相手の警戒心を和らげ、自然なコミュニケーションにつながることがあるという話です。私は普段、外国人支援の現場で通訳として関わることが多く、これまで特に意識していませんでしたが、通訳者は必然的に本人の横に立つことが多く、そのことが相手にとって心理的な安心感につながっている可能性があることに気づきました。もちろん、単に横に座れば信頼関係が生まれるわけではなく、通訳として正確かつ適切に役割を果たすことが前提ですが、「相手の正面に立つのではなく、同じ方向を向く」という姿勢には、支援関係を考える上で大切な意味があると感じました。
さらに、支援者が「大丈夫です」と答える子どもに対して、どこまで話を聞くべきなのかという難しさについても意見が交わされました。本人が話したくない段階で無理に聞き出そうとすれば、かえって心を閉ざしてしまう可能性があります。一方で、「大丈夫」という言葉だけをそのまま受け取れば、本当に困っていることを見逃してしまう可能性もあります。そこで、本人の問題を一方的に聞き出すのではなく、支援者側から自分の小さな悩みを相談してみることで、まず自分から相手を信頼する姿勢を示し、少しずつ関係をつくっていくというアイデアも共有しました。また、家庭への訪問支援では、本人が支援を求めたわけではなく、周囲の判断によって支援者が訪問する場合もあり、家族からすれば「自分たちの家庭を見に来た」という警戒心を抱くことがあります。支援者が二人で訪問すれば、本人から見て「二対一」のような圧力を感じる可能性もあります。そのため、一人が必要な確認を行い、もう一人が本人の横に座って話しやすい雰囲気をつくるなど、支援者同士が役割を分担することも一つの方法ではないかという意見が出ました。
今回の研修を通して感じたのは、ヤングケアラー支援に必要なのは、単に「ヤングケアラーを見つける仕組み」や「支援制度を増やすこと」だけではなく、すでに地域に存在している人や組織、制度、活動をいかに結びつけるかという視点です。ヤングケアラーの問題は、家庭の中だけで完結するものではなく、精神疾患、障害、介護、経済的困窮、教育、外国人支援など、さまざまな分野の課題と重なり合っています。だからこそ、一つの専門機関だけですべてを解決しようとするのではなく、それぞれの専門性を持つ人や組織が横につながり、必要な人を次の支援へつないでいくことが重要です。今回、異なる分野の支援者が同じテーブルを囲み、それぞれの「悩み」や経験を持ち寄ったことで、専門分野を越えて考えることの価値を実感しました。「支援を抱え込まない」という言葉を、支援者個人の心構えにとどめず、地域全体の仕組みとしてどう実現していくのか。今回の研修は、そのことを改めて考える貴重な機会となりました。




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